🧭まず知っておきたい言葉
- 臨床推論
- 「この患者さんは何が原因で、何から手をつけるべきか」を筋道立てて決めるまでの、頭の使い方のこと。 評価の手技や運動療法の"やり方"ではなく、それを選ぶまでの考え方を指します。
- 主訴
- 患者さんがいま一番困っていること。 本ツールでは、口に出た言葉だけで終わらせず、その奥にある生活の困りごとや本当の願いまで掘り下げます。
- 仮説
- 原因の候補のこと。「なぜこの困りごとが起きているのか」の候補を複数挙げ、評価で確かめて絞っていきます。 最初から1つに決め打ちしないのが大事です。
- 予後
- これからの回復の見通し。本ツールでは「◯◯できるようになる」と1点で決めつけず、基準の見立て+上下のブレ幅(ベースライン+ブレ幅)で持ちます。
- ギャップ
- ゴールと今の差。ここが埋めるべき対象になります。数字で出せるものは数字で、 出せないもの(表情・意欲・動作の質など)は言葉で整理します。
🧩このツールで出てくる整理のしかた
臨床推論マスター講座で扱っている整理の枠組みです。名前だけ覚えるより、実際に1症例通してみると身につきます。
- 主訴直結型推論
- 患者さんの主訴を出発点に、関係することだけを積み上げていく考え方。 主訴を1本の軸にするので迷いにくく、時間もかかりません。基本の型です。
- ゴール逆算型推論
- 最終的にたどり着きたい姿から逆算する考え方。退院・復帰など期限のある症例で力を発揮します。 大事なのは「主訴 ≠ ゴール」——今困っていることと、最終的に目指す状態は別物として扱います。
- 主訴の3階層
- 主訴を3つの深さで捉える整理。表面(言葉どおりの訴え)→ 中間(生活の中での困りごと)→ 真の主訴(本当の願い)。ここに本人の希望を加えて整理します。
例:「膝が痛い」(表面)→「買い物の途中で休んでしまう」(中間)→「また畑に出たい」(真)。 - 4視点
- 仮説や現在地を、4つの角度から見る整理。体だけを見て原因を探すと的を外すため、この4つで抜けを防ぎます。
- 身体…筋力・可動域・痛み・耐久性など、体そのものの問題
- 認知…理解・記憶・注意など、動作の手順を覚えられるか
- 心理…痛みへの恐怖、意欲、不安など、気持ちの面
- 環境…段差・手すり・履物・介助者など、まわりの条件
- 5軸
- ゴール逆算型で情報を集めるときの5つの角度。広く取ってからゴールを決めるのが順番です。
- 病態…いま体の中で何が起きているか(診断名、損傷の部位と程度、術式、荷重などの制限、既往)
- 予後…これからどう変わりそうか(一般的な回復経過+この人の回復を後押しする/妨げる要因)
- 本人・家族の希望…どうなりたいか(本人の望む生活、家族の望み、両者のズレ)
- 現在地…いまどこまでできるか(寝返り〜歩行の基本動作、ADL、筋力・可動域・痛み)
- 社会的背景…退院後の生活が成り立つ条件(家屋の段差や手すり、介護力、仕事や役割、使える制度)
これにリスク管理(バイタル、禁忌、転倒リスク)を常に重ねます。 - ゴール三本柱
- ゴール設定・予後予測・現在地把握の3つ。この3つが揃って初めて、 埋めるべき差(ギャップ)が計算できます。どれか1つでも曖昧だとギャップが出せません。
- SMART
- 良い目標の5条件。具体・測定可能・達成可能・関連性・期限。 「歩けるようになる」ではなく「2週間後に杖で50m連続歩行」のように、 測れて期限のある形にします。
- 仮説の3区分
- 評価の結果と照らして、仮説を◎本命/◯保留/✕消去に分ける整理。「保留」を積極的に残すのがポイントで、消しすぎると後で立て直せなくなります。
- 優先順位の軸
- 介入の順番を決めるときの軸。①リスク管理(最優先)→ ②主訴/ゴールへの直結度 → ③改善可能性 → ④効果の波及 → ⑤本人の希望 → ⑥4視点のバランス。
ここを決めないと、問題点をたくさん挙げてもどの患者にも同じメニューになってしまいます。 - 短期ゴール
- 長期・中期のゴールから逆算した、直近の目標。目安は入院なら3〜4日、外来なら1〜2週。 介入はこの短期ゴールに直結させます。
- 再評価の4パターン
- 介入の結果を①改善あり/②部分改善/③変化なし/④悪化で判定する整理。 「変化なし」は仮説そのものを疑うサインです。
- 効果の波及
- そこが良くなると、他にも良い影響が出るかという視点。 優先順位をつけるときの判断材料のひとつです。
🩺評価・介入まわりの言葉
- 定量/定性
- 定量=数字で出せるもの(歩行速度、可動域、痛みの点数など)。定性=数字にしづらいもの(表情、意欲、動作の質など)。 両方そろえて見るのが本ツールの整理です。
- 参加レベル
- 家庭・仕事・地域での役割のこと(ICFの「参加」)。 「歩けるか」だけでなく「畑に出られるか」「仕事に戻れるか」まで見る視点です。
- 本人の希望(HOPE)
- 患者さん本人が望んでいること。ゴール設定は、専門職の判断と本人の希望の両方を踏まえます。 希望とゴールが噛み合わないときは、両方を並べて示すのが本ツールの進め方です。
- オープン/クローズドクエスチョン
- オープン=はい・いいえで答えられない、自由に語ってもらう質問。クローズド=はい・いいえで確かめる質問。 まずオープンで広げ、クローズドで絞るのが基本です。
ここに無い言葉は、対話の途中でそのまま質問してください。
本ツールは教育・学習支援を目的としており、出力は学術的仮説です。最終的な臨床判断は専門職の責任で行ってください。